おにぎりパワー
久しぶりの遠征先情報となってしまいました。
諸事情あり、遠征前にもう少しエストニアの事や今回の遠征の内容などをお知らせする予定がとうとう果たせず、
そのまま遠征に出発することとなってしまいましたことを、まずはお詫び申し上げます。
今年の遠征地エストニアは、前日までの雨続きから一転、
私たちを歓迎するかのような北欧の柔らかい日差しに包まれた爽やかな毎日でした。
目の前に広がる景色の大半を占める青空の下に広がる、黄金色の大自然は360度どこまでも平らで美しく、
北海道にも満たない小さな国であることを忘れさせてくれました。
今回は本来のおにぎり隊の目的である、おにぎりを握って現地の人々と交流する活動にプラスして、アマチュア相撲世界大会に合わせた日本文化週間の行事に参加していただいたため、イベント、イベントの連続で、まずは順調に事を運べるか多少不安を抱えながらの出発でしたが、おにぎりのパワーは実にインターナショナルに発揮することを実感したツアーでもありました。
到着翌日朝、即刻活動開始。
タリン旧市街の丘の上にある国会議事堂のキッチンとダイニングルームをお借りして行ったおにぎり交歓会が、今回の遠征最初のイベントでした。
この国を代表する少女合唱団「エレルヘイン」の団員たちとその保護者がお客様です。
国会議事堂の中に入るのは私も初めて。
18年前、旧ソ連からの開放を実行に移した政治家達が力を終結した場であることを思うと、感無量でした。
実は国会議事堂の一般人による集会は前代未聞で、通常絶対にありえない事とのこと。
では、なぜ許されたか・・・。それは「歌とおにぎり」でした。
まさしくそれはエストニアと日本の平和の象徴であることを議事堂の方々が認めてくださったのだと、交歓会終了後聞かされました。
ここで一つ、おにぎりパワー発揮。

鈴(りん)が鳴り、那須隊長の煎茶のお点前が始まると、参加者の目は手元一点に集中。
衣擦れの音もしないほど息を凝らして見入っているその静かさを破って、「エレルヘイン」の清らかな歌「さくら」がダイニングルームいっぱいに響き渡る。
それとともに隊長の「気」の入りは頂点に達し、人々の心に言葉にならない感動が溢れている様子が見て取れました。
それはまさしく日・エの息がぴったりと合った瞬間でした。
そして心の満足を得た後にはお腹の満足。お点前の後のおにぎりと豚汁の美味しかったこと。
キッチンで炊いたご飯にそれぞれが好きな具を入れて思い思いの形にご飯を握り、海苔を巻いてガブリ、笑顔に溢れた楽しいひと時でした。
終了後、毎日日の出と共に国旗掲揚が行われる「のっぽのヘルマン」の塔へ登頂。
長い螺旋階段を登り塔のてっぺんに出て見ると、強い風が白い雲を勢いよく流している秋空の下に、タリン市街が美しく広がっていました。

もう一つのおにぎりパワー。
エストニア第二の都市タルト市にある高齢者デイセンターを訪問し、ここで行われているサークルの一つであるフォークダンスグループのおばあちゃん達20名ほどにおにぎりを披露。
比較的静かで控えめな国民性を持つ印象のエストニア人ですが、ここでは元気一杯なおばあちゃん達のありのままの姿を垣間見ました。
手で握る異国の食べ物「おにぎり」を恐る恐るながら美味しそうに食べ、豚汁をお替りして楽しんでいました。
残ったおにぎりを「どうぞ持ち帰ってください」と言うと、「夫に食べさせる」と嬉しそうに微笑んだおばあちゃん達の笑顔は健康そのものでした。
終わりにフォークダンスを教えてもらい、おにぎり隊も一緒にクルクル廻されながら楽しく踊りました。
久しぶりにお腹の底から笑ったことに気がついたのは私だけではなかったと思います。
それにしても踊っている時のおばあちゃん達の力の強かったこと、今だに腕や背中にそのパワーの印象が残っています。

第三番目の都市ラクヴェレへ到着したのは、その日の夜になりました。
ライトアップされたラクヴェレ城に迎えられたその町は、大相撲力士把瑠都関の故郷。
厳密に言うとさらにもっと田舎に行ったところに実家はありますが、この町の体育館で把瑠都関は柔道を学んでいました。
ラクヴェレの活動は、タリンでの国立料理・サービス専門学校に引き続き、ラクヴェレの料理専門学校でも行われた、日本食文化の講義と実演担当、古川講師の出番から始まりました。
Yokoso Japanの映像と両国の国旗に迎えられ、緊張が高まったところで講義が始まり、日本食文化の説明に参加者は熱心に耳を傾け、初めてみる日本の食材や調味料を手に、遠慮がちに香りを確かめたり試食したりしていました。
寿司、牛丼の実技演習もあり、校長先生自ら熱心に記録し、新しい食文化への興味を大いに深めた様子でした。

いよいよイベント予定最終日のスーパーマーケットでの「おにぎり」、一般の人々に手で握った日本の食べ物を受け入れてもらえるかどうか半信半疑でしたが、ここでもおにぎりパワー炸裂!
200ヶのおにぎりが瞬く間に無くなり、予定より1時間も早くはけてしまいました。
やはり、おにぎりは人々に笑顔を与える世界に通じる食べ物でした。
イベントの締めくくりはラクヴェレ市主催の「美と着物ショー」。
江戸時代の美人画に出会った画家トヌさんが、そこから受けた印象をバンド演奏にあわせてキャンバスに描いている間に、その浮世絵に出てくる日本女性の着物姿を現代の姿で再現するという企画でした。
割烹着姿でおにぎりを握っていた女性隊員達も、凛としたきもの姿で総出演。
さすがに日本人、着物を着ると身も心も引き締まります。
本番では那須隊長のお点前や舞踊も加わり、あでやかで華のあるステージを演じました。
この企画は日本大使館からの依頼でしたが、ぶっつけ本番状態でどこまで完璧に出来るものか不安だらけで、今回の数多くのイベントの中で一番気がかりな企画でした。
しかし予想以上に集まった大勢のお客様を前に、堂々と日本の美を披露することができました。
これは偏におにぎり隊の皆さんのご理解とご協力があってこそ実現したイベントでした。
おにぎり用の食材だけでも荷物が多いのに、さらに着物を準備していただいたため、飛行機に乗る時には超過料金が発生しないように荷物を分けたり、重い手荷物を各自で持ったり、幾度もハラハラした場面があったりと、皆さんには大変なご苦労をお掛けしましたが、今はそれも楽しい思い出となりました。
参加した隊員の皆様にはエストニアを訪問して頂き、現地の人々と温かい交流をして下さったことを心より厚く御礼申し上げます。
レポートを通してエストニアを知っていただいた皆様には、「おにぎり」を愛する温かい心の隊員の皆様と共に笑いの耐えないすばらしい遠征が出来たことを喜んでご報告し、このコーナーの締めとさせていただきます。
今後の日本おにぎり隊の益々のご活躍をお祈りするとともに、エストニアを遠征地として選んで頂いたことを改めて心より御礼申し上げます。

