故郷は遠くにありて想うもの… いや時々帰ろう
瀬戸内海に面した故郷:倉敷に夏休みと称して帰ってきた。空港から倉敷の町まで出て、そこに両親が迎えに来てくれた。 「 お帰り 」 なんてことないいつもの台詞だけど、「 ただいま 」とちょっと照れくさそうに返す。
何歳になっても親は親、子は子だ。
この倉敷の町は大原孫三郎というかつて紡績で財をなした人が文化を守るため私財を投じて情緒ある昔ながらの風情を残した町だ。ブリジストン美術館と並んで日本で最も古い美術館である大原美術館もこの町並みの中にある。久しぶりに母と妻と2歳の娘をつれて入ってみた。
エル・グレコの受胎告知をはじめ、ピカソ、モネなどの作品と共に日本の美術界に大きな影響を与えた日本人画家の作品が並ぶ。分かったような振りをしながら、ふむふむと絵を愛でる。2歳の娘も同じく絵を見ながら何度もうなづいている。
中庭に出るとモネが睡蓮の絵を描いた場所から譲り受けてきたといわれる睡蓮が水路にたくさん咲いていた。またも、ふむふむと眺めていると後から、「あの花を見てください。今日咲いたんですよ。これまでで初めてですこんな花。」と工芸館の所長さんらしき人が話しかけてきた。
指さされた方を見ると「おぉ。」 白と赤の二色になっている花が浮かんでいた。こんな花はすごく珍しいらしい。

いいものを見た。ラッキーだ。
手を引いている娘もまたなんども頭を前後にシェイクしながらふむふむと見入っていた。“分かってんのか?”
「綺麗だねぇ、珍しい花なんだよ。」とこちらも分かったような風に説明する。
そんな感じで、美術館の中を更に進む。
ふと娘が一枚の絵の前で俺の袖を引っ張りながら、「 お父ちゃんだ。お父ちゃんがいるよぉ。」と指を指す。シャガールの描いた一人の男性の絵が目に入ってきた。
『むむっ!』と覗き込む。 娘は更に追い討ちをかけるように、「これ、お父ちゃんだよ~」と連呼する。

「に、似ている。…かも。」
でも俺はこんな派手なジャケットは着ないよ。と意味不明な弁解をしながら娘の手をひっぱりながら退散したのであった。
子供は色んなことがよ~く分かっているみたいだ。


