久しぶりの道
とある探し物をしに今日は浅草橋を歩いた。
この町をじっくり歩くのは10年ぶり位だろうか。今の時代からは一歩引いた感のある下町っぽさがあちらこちらで残っている。歩きながら色んな事を想い出していた。
仕事で独立したばかりの頃、イランから日本に来てペルシャ絨毯の卸業をスタートした友人がいた。彼の最初の事務所がこの町だった。音沙汰が無くなって随分と年月が経つが元気にしているんだろうか…。
時折会う彼と 「どう、調子は?」 と、その都度交わす挨拶。お互い独立したてで良い意味でライバル心と同志の様な感覚だった様に思う。彼の趣味は柔道。週2回の稽古にも熱心に通っていた。
いつも色んな意味で自信満々に見えた彼だったがある時、『柔道、ホントに好きなんだね。』の俺の質問にこう答えたのが今でも印象に残っている。
『柔道で汗流すと頭が真っ白になって、色々辛いことや嫌なことを忘れるんだ。』
異国から単身乗り込んできてビジネスをする。その事がどれだけ大変な事か。言葉の壁だけでなく色んな“常識”の壁もあっただろう。外国人というある種の壁も感じたんじゃあないだろうか。僅かだったけどこの時交わした会話から、彼の分かり合えない溶け込みきれないもどかしさをあの時感じた。
“まぁ、日本人同士でもそうだからなぁ…” と、現在に気持ちを戻し、人と人とのコミュニケーションの狭間に潜む不思議と妙味に異文化交流を推し進める我が身を省みつつ、線路沿いの煤けた店と新しい店がモザイク状に連なっている道を更に進んだ。
「おっ、こんな所に。」 ふと立ち止まる。=モンゴル Town=の看板。
どうも癖でおにぎり隊で行った国には思い入れが強くなっている。何をやっているお店なのか?つい“close”のプレートにも関わらずドアを開け店の中をそ~っと覗く。誰も居ない、、が奥で人の気配はする。
小さな小学校で使うような机と椅子が1揃いだけ狭い店の端に置かれ、壁には怪しげなモンゴルらしい人形やオブジェ、そして写真がいっぱい掛けてある。天井にはゲルの天井のパーツらしき色鮮やかな車輪状のものが吊るされてあった。
「う~ん、分からん」とまたドアをそっと閉め久しぶりのモンゴルの香りのする店を後にする。
そんなこんなで更に歩いていると美味しそうなコーヒー屋を見つけた。入ってみると雰囲気は良いが誰も客がいない。貸切である。ホットを一杯注文して、パラパラと本を読んでいたら店のマスターが人懐っこい顔して話しかけてくるのでたわいのない会話をする。まるで久しぶりのお客さんだったかの様な嬉しそうな表情。なんだかこの町は少し時間の流れが違う。“やぁ、ひさしぶり~!”的な感情や場面が次々と出てくる。
そんなコトを感じつつ、探し物も結局見つからず、『ま、いいか…』 と浅草橋を後にした。
そして自宅に到着。メールをチェックすると、
『 ご無沙汰しています 』 と仕事でボストンに一年余り行っていたおにぎり隊員から帰国のメールが。
「おぉ、久しぶりだなぁ・・・」と嬉しくなって笑みがこぼれる。
そして今日という“久しぶり”がテーマな一日に自宅で入れたコーヒーで一人乾杯をするのであった。


